学生募集の戦略で、入学志願者を増やす方法を説明します。読者対象は、学校の関係者や広報を担当されている方です。ホームページを中心に広報を担当していた私の経験をもとに、学生募集の本質的な部分について解説しています。
なぜ、入学志願者を増やす方法が重要なのか?
近年は若い人の数が減っていることもあって、「学生募集が芳しくない」と苦労されている学校関係者も多いのではないでしょうか。だからこそ、このページをご覧になっていると思いますが、学生募集についてお話しする前に、考え方を確認しておきたいんです。
学校といえども、やっていることの本質は商売です。学生は学費を払って授業を受けているので、考え方を少し変えて、学校をお店、学生をお客とします。つまり、学生募集を集客と捉えることが戦略上非常に重要なんです。
確かに、学生募集は特殊ではあるものの、客商売だから集客という考え方が通用することに変わりはないんですね。そこで、入学志願者を増やす方法として、学生募集の戦略をお話しします。頭の中のモヤモヤが晴れて、ハッキリと道筋が見えてきますよ。
学生募集の戦略、入学志願者を増やす方法のポイント。
学生募集の戦略について、入学志願者を増やす方法のポイントを説明します。ポイントは5つあるので、ぜひしっかりとすべてに目を通してください。
前置き:なぜホームページ屋が、学生募集の話をするのか?
私は以前、専門学校に勤めていました。教壇に立ちながらも、ホームページによる広報で学生募集も行っていました。そして、その時に募集がうまくいって学生数を5倍にできた経験から集客を仕事にするようになりました。なので、学生募集に関してはかなり知識があるんです。
さて、学生募集がうまくいっていない学校は、何に問題があるのか考える必要がありますね。おそらく複合的にいろいろな問題が絡んでくるとは思うんですが、ここでは本質的な問題を見直したいと思います。本質を改善できれば枝葉末節な部分は半ば自動的に変わっていきますからね。
では、その本質的な問題とは何かというと、『学校はかなり特殊な募集をしなくてはいけない』ということです。なお、私が携わっていたのが専門学校の広報なので、ここでは専門学校や大学はどうすべきなのかをお話しします。他の学校は当てはまらないかもしれませんが、ご了承ください。
学生募集の特殊性とは?
あなたは、学校の学生募集がかなり特殊であることを理解していますか? どこが特殊なのかというと、何を訴求点にすべきかがとても決めにくい点です。それは、専門学校や大学が最終学歴になりやすい、つまりその先にあるのが就職だからなんです。
もう少し分かりやすく言うと、以下のようなポイントに整理できます。
- 志願者の求める学校像(志願者が入学したい学校)。
- 学校が行いたい教育(その学校が得意な教育分野)。
- 企業が求める人材(採用したくなる技能や人柄)。
つまり、どこに焦点を当てるかが極めて難しいんですよ。志願者の要望に合わせると、学校と企業の要望に合わない。学校の要望に合わせると、志願者と企業の要望に合わない。企業の要望に合わせると、志願者と学校の要望に合わない。こんな状況なので、訴求点を決めづらいんですね。
でも、訴求点が明確でないと学生募集しづらいし、志願者もどんな学校なのか分かりにくくなってしまいます。なので、どこかで折り合いをつけて、明確な訴求点を作り出すしかないんです。具体的には、学校の要望を抑え込んで、志願者と企業の要望に絞るべきでしょうね。
ではなぜ学校の要望を抑えるかといえば、志願者も企業も学校からすればお客さんだからです。お客さんに我慢を強いるのは、商売としておかしいですから、学校が我慢すべきなんですよ。つまり、学生募集も一般企業の『集客』と同じだということなんですね。
こうすれば、3点ではなく2点で折り合いをつけられるので、かなり訴求点を絞りやすくなります。学校としては指導しにくいかもしれませんが、学生集めのためなので、ここは辛抱して乗り越えるしかないでしょう。学生がいなければ学校は成り立たないわけですから。
志願者が学校に求めるものとは?
志願者が学校に求めるものといえば、実は本人がはっきりと意識していない場合が多いと思います。なんとなく学校を決めて、そのあとに志望理由を決める。つまり、理由は後付の場合が多いので、学校がある程度導く必要があると思いますよ。
まず、求めるものとして真っ先に思いつくのは、間違いなく『就職』でしょう。ただし、就職するために学校に通うわけなので、就職できるのは当たり前です。なので、「就職できる学校が希望です」という要望はさすがにないでしょう。
では、どう考えるかというと、学校がどれだけ就職支援を真剣にしているかです。どんな支援策があるのか具体的に示すことで、学校を理解してもらうことができ、信頼感が生まれてくるんです。そしてそれがそのまま志願者の求めるものになると思いますよ。
また、やる気のある志願者なら「○○(教科名)を学びたい」と具体的な希望を持っている場合もあるでしょう。ただし、正直なところそれだけ明確な希望がある人は極めて少ないでしょうから、個別に親身な対応をすべきでしょうね。集客はどうしても最大公約数的にせざるを得ないですから。
企業が学校に求めることとは?
企業が学校に求めることは簡単に分かると思います。直接聞けばそれで済みますからね。ただ、おそらくほとんどの企業は自社の都合しか言わないと思うので、一般的な話にはならないと思います。いろんな業種に就職するような学校の場合はちょっと絞りにくいかもしれないですね。
ただ、企業が求めるものの基本的な部分は同じだと思うので、そこは確実に押さえておく必要がありますよ。例えば、技術的に優れている人材、コミュニケーション能力が高い人材、まじめな人材、発想力富んだ人材など、様々だと思います。
できるだけたくさん企業の要望を集めたうえで、そこから最大公約数を見つけ、企業の要望を明確化する必要があるでしょう。ただ、いずれの場合でも近年は即戦力を求められるでしょう。なぜなら、企業内で教育して人材育成するだけの余裕が無いからです。
これらは当たり前かもしれないですが、実際には学校の行いたい教育を優先してしまうこともあるんじゃないでしょうか? それをやらないようにするためにあえて触れました。
志願者に訴求すべきポイントとは?
志願者に訴求すべきポイントは、志願者の要望を実現しつつ、企業が必要としている人物像に近づけたところにあります。もう少し言うと、企業の要望は変えられないので、丁寧に説明して志願者に折れてもらうようなやり方が必要なんですよ。
単純にいうと「本校で学べばこの職業に就けます」ということになると思います。具体的には「この教科を勉強すると、この職業のこれに役立ちます。」というように説明すべきです。おそらくほとんどの学生は職業に必要な技能をよく理解していませんから。
そして、学生が学びたいと思っていることと、現実の就職に必要な技能とのギャップを埋めるような説明です。「あなたは○○を学びたいと思っているようですが、□□を学んで△△の資格を取得したほうが就職につながるんですよ」というような感じでしょうかね。
こんな感じで、企業が要望する技能を『教科や資格』に置き換えて分かりやすく説明すると、就職支援が手厚いことが伝わります。すると、志願者の要望と企業の要望を両立させた形の説明にできるので、訴求ポイントとしてはちょうど良い落としどころになると思いますよ。
訴求ポイントの生かし方とは?
訴求ポイントの生かし方について、お話しします。学校資料にしても、ホームページにしても、あるいは説明会やイベントにしても、『何が学べるか』ということより、『入学するとどうなるのか』という点を説明してください。おそらく、広報で最も見落とされる視点です。
本人の目線になれれば、「この学校を卒業した後に、自分はどうなっているだろうか?」ということが一番気になることに気づくはずです。先ほど説明したように、学生本人は、何を学ぶ必要があるかをほとんど理解していません。だから、学べる内容よりも、どうなるのかを説明しましょう。
例えば、キャッチコピーなら「○○が学べます」というよりも、「○○になれます」とか「○○に就職できます」といった感じです。説明では、必ず目的から入って、その後に細かい学科などの説明をしてください。学生が見えていない学校には、これができないんですね。
まとめ:学生募集は、集客であると考えてください。
いかがでしたか? 学生募集の戦略で、入学志願者を増やす方法を説明しました。
学生募集を集客と捉えて、非常に特殊な集客を行う必要があるということを理解するところから始める必要がありましたね。そして、学生だけでなく企業もお客様としてとらえ、どのような訴求を行うかがポイントでした。
大事なので何度でも繰り返しますが、学生と企業というお客様をどれだけ大切にできるかがとても重要です。普通の企業と同じ『集客』という概念を持ってほしいんです。なので、志願者も企業もどちらも納得できるような学校になる必要があるわけです。
そうすることによって、志願者に対する訴求ポイントが明確になるので、効果的な学生募集を行うことができるんです。そして、忘れないでいただきたいのが、学校入学の目的を説明することです。学べる教科から説明したのでは、学生に響かないことに気づいていただきたいと思います。
以上、「学生募集の戦略、志願者を増やすためには?」と題して解説しました。