トヨタの強みを、メンテナンス面から分析します。(2)

トヨタの強みを集客的観点で分析! - アフターサービス編

トヨタの強みメンテナンスの面から分析します。読者対象は、トヨタの強みを知りたい方ですが、営業職の方や経営者にも適した内容です。例示を使って強みを解説しただけでなく、集客への応用の仕方も詳しく説明しているからです。

トヨタの強みを、メンテナンス面から知る意味とは?

現在のトヨタは、ハイブリッド車や燃料電池車を量産して技術力の高さを示していますが、以前はお世辞にも技術が有るとは言えませんでした。にもかかわらずトヨタの車は売れていたんです。なぜ技術で勝てないのに売ることができたのか、その強みについて聞かれたらあなたは何と答えますか?

私なら「トヨタの強みは発想の転換にある」と答えます。でも、具体的にどんなことをしたのかわからない部分も多いですよね。つまり、トヨタの強みをメンテナンス面から知るということは、トヨタの発想力を知るという意味でもあるんです。

そこで、発想力を『集客』という観点に絞って、メンテナンスの面から解明していきます。

トヨタの強みを、メンテナンス面から分析した結果を解説。

それでは、トヨタの強みをメンテナンスの面から分析した結果をご紹介します。

昔はすぐ壊れるのがトヨタ車でした

現在のトヨタしか知らない方は信じられないかもしれませんが、昔(40年以上前になりますかね)のトヨタ車はしょっちゅう故障したんです。なので、車について詳しい方はトヨタ車を敬遠していました。しかも、特定のどこかが壊れやすいということでもなく、いろんなところが壊れたようです。

特に、なかなか理解しがたい故障や不具合も多くて、機械の構造が「どうしてそんな仕組みにしたんだろう?」と首をかしげるようなものも少なくなかったようです。そこで、ある故障の実例をご紹介します。

身内が体験した不具合の実例

私の身内(父親)が体験した不具合の事例をご紹介します。当時、大学生で県外にいた父親が体験した話なんですが、なぜそんな不具合が出るような構造なのか、いまだに理解しがたいものでした…。

コロナを軽快に走らせていたら、突然走行不能に…。

アルバイト先でコロナを借りた父は軽快に走っていました。当時はほとんどの車がマニュアル車なので、シフトチェンジを繰り返して走ります。すると、しばらく走ったところで急にギアが入らなくなり走行不能になってしまったそうです。

しかも止まったところが偶然にもトヨタの目の前だったとか。すると、すぐにセールスマンと技術者と思われる人が走ってきました。

セールスマンが血相を変えて迫るように「どうしましたか?」と聞いてきたので、「ギアが入らなくってしまって云々…」と話をすると、技術者がピンと来たような表情で「ボンネットを開けてもらえますか?」と言ってきました。

言われたとおりボンネットを開けると、「ギアが入らなくなった場合は、この3つの棒が同じ高さになるように調節してください」そういって技術者が、手に持っていたハンマーでトントンと叩いて高さを揃えると、ウソのようにギアが入るようになりました。

お礼を言ってその場を立ち去った父でしたが、その後数回にわたって同じ現象が発生し、ハンマーで叩いて直したのだとか。当時の車には工具セットが装備されているので、道具には困らなかったようですが、これが決定打になってトヨタ車を買う気が全くなくなってしまったそうです。

「一体どんなギアボックスなんだろう?」という謎が残ってしまいましたが、今回は趣旨が違うので深追いはしないことにしておきますね。

故障を逆手に取る、発想の転換とは?

当時、ギアボックスの不具合でお客を一人失ったトヨタですが、実はこういった事例で逆にお客さんを獲得していったと考えられるのがトヨタのすごいところなんです。不謹慎かもしれませんが、故障を絶好のチャンスと捉えることができれば、商売に結び付くんですよ。

つまり、故障する車しか作れないのなら「車は故障するものだからメンテナンスやアフターサービスがとても重要です」という宣伝の仕方をするんです。事実、トヨタ車は整備しやすいように重要部分には必ず手を入れやすくしたり、目視しやすくしたりといった工夫がしてあるんですよ。

要するに、壊れることを前提として、すぐに修理や整備をすることができるんです。ほかのメーカーが壊れない車を目指したのとは全く方向性が違います。だからこそ、目の前で止まったコロナを見たトヨタの従業員が、お客さんに安心感を持ってもらおうとして血相を変えて走ってきたんですね。

このように、「壊れるからメンテナンスやアフターサービスが大事」という故障を逆手に取る発想の転換が行われていたんじゃないでしょうか。

故障しないことは、大事ではないのか?

もちろん、製造業である以上、故障しないことはとても大事です。だから、近年のトヨタは業界トップクラスの高品質で簡単には壊れません。しかし、故障しないものを作れなかったらどうすればいいんでしょうか? そう、そこを逆手に取るしかないんですよ。

故障しないものを作るのも、故障を確実に直すのも、共通することはどちらもお客様の信用を得ようとしていることに違いはない点です。ただ、それのアプローチの仕方が違うだけなんです。しかし、良く考えてほしいんですが、壊れないというのは、製品の寿命まで使わないと分かりません。

ところが、アフターサービスが万全と言われれば、壊れること自体怖くありません。「ひょっとしたら壊れるかもしれない」と思うのと「壊れてもすぐ直してくれる」と思うのは気持ちが違います。結果的に世の中の多くの方が、アフターサービスが万全であるという方を選んだといえるんですね。

集客に生かすべき発想力とは?

集客に生かすべき発想力があります。それは、トヨタの事例から学べる、無いなら無いなりのやり方があるというところです。無いものをあるようにウソをつくわけでもなく、開き直るわけでもありません。単に表現を変えて、受け手が違う印象を持つようにしただけなんです。

『故障してもアフターサービスは万全です』というのは、ディーラーの対応がとても親切で、どんな些細なことでも優しく受け付けてくれそうなイメージがしますよね。明らかに受け手の印象が違ってくるんですよ。「やっぱりトヨタはうまいなぁ」と感心してしまいます。

このようにトヨタは、商品の強みを巧みに引き出し、しかも伝わる伝え方をうまくやっています。こういった発想力は、商売をやるうえで本当に学ばなくてはいけないことではないでしょうか。

まとめ:お客様目線で、発想を転換しましょう。

いかがでしたか?

トヨタの技術面での弱さが、逆にメンテナンスやアフターサービスという強みになったことを例にとり、そこから集客について学ぶべきことを説明しました。集客的観点だけでお話ししているので、多少偏りがあったかもしれませんが、本質は理解いただけたんじゃないかと思います。

繰り返しになりますが、トヨタは発想を転換して、弱い部分を強みとして表現しました。これは、売る側の立場で考えていては決して出ることのない発想です。つまり、売る側ではなく買う側の気持ちで考えることこそが発想の転換であり、お客様目線の実践ということなんですね。

したがって集客では、お客様からの視点で自社を見つめることが必要であることを、知っていただければ幸いです。

以上、「トヨタの強みを、メンテナンス面から分析します。(2)」と題して説明しました。

⇒ トヨタの強みを、技術面から分析します。(3) もありますよ。